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すぐに使えるカウンセリングの技~ブリーフセラピー・認知行動療法~

 目次
1.ブリーフセラピー
 (1) ブリーフセラピーの概要
 (2) 解決志向モデル
   ① リソース

   ② ゴール
 (3) ブリーフセラピーの考え方
   ① うまくいっていることを続ける(Do More)
   ② これまでとは何か違う事をする(Do different)

 (4) ブリーフセラピーの技法
   ① スケーリング・クエスチョン
   ② ミラクル・クエスチョンとタイムマシーン・クエスチョン
2.認知行動療法
 (1) 認知行動療法の概要
 (2) 自動思考とスキーマ
 (3) 認知行動療法の適応の拡大

1.ブリーフセラピー

(1) ブリーフセラピーの概要
 「ブリーフ(brief)」とは「短期の」という意味であり、ブリーフセラピーとは「短期間で、効率的に、効果的に行うセラピー」のことを差し、わが国では「短期療法」と訳されています。その名のとおり、どうクライエントと関わることが毎回の面接を効果的にし、結果として面接期間を短縮できるかにこだわって開発されたモデルです。ブリーフセラピーは、狭義には天才的治療者と言われたミルトン・エリクソン(Milton Erickson)による治療実践に啓発を受けて作られた解決志向アプローチをモデルとしています(宮田,1997)。
(2) 解決志向モデル
 ブリーフセラピーは、問題志向ではなく解決志向と言われています。
 問題の原因を取り除くことが困難な場合や、複合的・特定不能・解消不能な場合は、原因が明確に把握できたとしても、それらを取り除くことは難しいです。例えば、生育歴・家族要因に問題があると認識できたとしても、生育歴は変えられないし、親も取り替えることはできません。原因(過去)志向モデルより、解決(未来)志向的モデルの方がより現実的なのです。
 ➀ リソース
 「リソース」は資源と訳されます。リソースは、「今、子供がもっているもの」ととらえます。子供にないものを求めるより、今、子供がもっているもの、子供にあるものを探し、それらを利用しようというものです。リソースには、内的(個人内)リソースと外的(外部)リソースがあります。内的リソースは性格・能力・興味・関心があること・得意なことなどです。外的リソースは、その人にかかわる人家族・友人・教師などです。
 ➁ ゴール
 小さなゴールを設定します。今ではなく、未来に目を向けることで解決のイメージを膨らませていきます。ゴールがあれば、それに向けての行動もできますし、希望も夢も膨らみます。まずは、具体的なイメージをもつことで、その目標とするゴールに向けての具体策を考えていくことができます。
(3) ブリーフセラピーの考え方
 ➀ うまくいっていることを続ける(Do More)
 ブリーフセラピーでは問題の「原因」よりも「解決」に着目することから、現時点において“問題が起きていない時、比較的にマシである時”である「例外」(Exception)に目を向けます。そして、その「例外」状況を生んでいる行動やコミュニケーションの仕方を特定し、「例外」が増えるような働きかけを行います。こうしたアプローチを「Do more」と呼びます。
 教師が、親からきょうだい喧嘩の相談を受けました。その相談の中から、いいところ「例外」を探し、その中に解決策を見出していきます。  
親  「家では、弟とのケンカが多いんです」
教師 「もう少し具体的に、教えてもらえませんか」
親  「週に2回は、弟にちょっかいを出して叩いて、ケンカしてしまうんで
す。」
教師 「週に5回はケンカしないことがあるのですね。喧嘩をしない時には、どんなことがありましたか?」と聞いてみます。その中に、例外探しやリソースがあるのです。このケースでは、母親が、仕事から早く帰ってきて、子供と関わる時間が多い時はケンカが少ないことがわかりました。
 ➁ これまでとは何か違う事をする(Do different)
 事例によっては「例外」状況の特定が困難であることもあるかもしれません。その場合には、問題維持に強く関係していそうな悪循環的なパターンの特定を図ります。そして従来のパターンとは異なるパターンを作れるような行動やコミュニケーションが生まれることを意図した働きかけを行います。このようなアプローチを「Do different」と呼びます。
 ブリーフセラピーでは、問題が起きていない良循環を拡張するアプローチ「Do more」と、悪循環を断つというアプローチ「Do different」とがあり、これらを両輪として、問題解決への働きかけを行っていきます。
(4) ブリーフセラピーの技法
 ブリーフセラピーにはいくつかの特徴的な技法があります。解決志向モデルは、従来の問題志向とは異なり、問題、病理、原因にこだわるのではなく、クライエントのもっているリソース・解決像に焦点を当てる方法です。そのため、真にクライエントを支え、クライエントの能力を引き出す、安全で効果性の高いモデルとなっています。
 ➀ スケーリング・クエスチョン
 (例) 最悪の時を1点、最高の時を10点とすれば、今のあなたはどれぐらいかな?
  生徒 「今は、3」
  教師 「その3点はどんな内容なの?」
    ※3点の中にも、有効なリソース(趣味・特技・人間関係・状況)がある可能性もあります。
  教師 「3点から1点上げるには、どんなことをすればいいのかな?」
  ※小さなゴールを設定し、解決志向に向かわせます。
 ➁ ミラクル・クエスチョンとタイムマシーン・クエスチョン
  2つのクエスチョンは、ゴールのイメージを具体化する質問技法が有効です。ミラクル・クエスチョンでは、「もし、問題がすべて解決したら、どのようになっていますか?」。タイムマシーン・クエスチョンでは、「5年後の解決像はどのような感じですか?」と、未来のイメージを持たせます。

2.認知行動療法

(1) 認知行動療法の概要
 アルバート・エリス(Albert Ellis)によって論理療法が、 アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)によって認知療法が提案された。認知行動療法は、コモンセンス(常識)に基ずくアポローチであり、以下、2つの考えを基盤に置いているという(Beck et al,1979)。(1)認知は情動と行動に対して支配的影響力をもつ。(2)活動や行動の仕方が思考パターンや情動に強い影響を及ぼす可能性がある。
 人は成長するにつれ固定的な自己のスキーマが形成され、それに基づいて歪んだ思考方法や考えが自然に浮かぶ自動思考が起こっています。認知行動療法は、そうした認知の歪みに焦点を当て、認知を修正することで症状が改善する治療法です。日本では1980年代後半から注目されるようになり、2010年4月に厚生労働省は保険診療として認可しております。
(2) 自動思考とスキーマ
 認知には、何かの出来事があったときに瞬間的にうかぶ考えやイメージがあり、「自動思考」と呼ばれています。「自動思考」を生み出すもとになっている考え方のクセが「スキーマ」です。「自動思考」が生まれるとそれによって、いろいろな感情が起こり、良くない行動が起こります。例えば、出来事として、デートの時、彼氏との会話が弾まなかったことに対して、スキーマ(どうせ私なんか魅力ないし~)から、自動思考(ふられてしまう)という認知の歪みが起こり、行動、感情(気持ち)、身体反応に影響がでてしまうのです。特徴的な自動思考パターンを修正できれば、症状を大幅の軽減できるという(Clatk DA,Beck AT et al.,1999)。
 認知行動療法では、自動思考により気持ちが大きく動揺したりつらくなったりした時にクライエントの頭に浮かんでいた考えに着目し、それがどの程度、現実と食い違っているかを検証し、思考のバランスをとっていきます。それによって問題解決を助けていくのですが、こうした作業が効果を上げるためには、面接場面はもちろん、ホームワークを用いて日常生活のなかで行うことが不可欠です。
(3) 認知行動療法の適応の拡大
 認知療法・認知行動療法は、うつ病や不安障害(パニック障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害など)、不眠症、摂食障害などに効果があることが実証されて広く使われるようになってきました。
 本章では、学校教育で役に立つ認知行動療法で、ネット依存へのワークシートを紹介します。

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