• HOME
  • BLOG
  • いじめ
  • 教員のチームで子どもを守る~アセスメント・コンサルテーション・チーム支援~

教員のチームで子どもを守る~アセスメント・コンサルテーション・チーム支援~

 目次
1.学校でのアセスメントの進め方
 (1) アセスメント
  ① 行動観察

  ② 生態学的アセスメント
  ③ 心理検査
 (2) Q-U・アセスでのアセスメント
  ① Q-U(Questionnaire-Utilities)

  ② アセス
 (3) カウンセリング
 (4) コンサルテーション
 (5) チーム支援会議
 (6) チームの守秘義務
 (7) 通告義務、報告義務

 学級経営・生徒指導で困っている先生におすすめの記事です。学級経営・生徒指導の基本の基本として、絶対に役に立つことを解説します。もう1人の教師が、1人で問題を抱えている時代ではありません。チームで予防的にデータを活用することにより、安定した学級・学校づくりができます。この記事を実践すると、学級崩壊は絶対に起こらないと確信しています。

1.学校でのアセスメントの進め方

(1) アセスメント
 アセスメントとは、医学でいえば診断に当たるものですが、 学校では「児童生徒理解」が近い言葉です。対象は子供だけではなく、家庭環境、学校環境も含まれ、実態把握や見立てとも言われています。

石隈(1999)は、アセスメントは「援助の対象となる子供が課題に対して取り組むうえで出会う問題や危機の状況についての情報の取集と分析を通して、援助サービスの方針や計画を立てるために資料を提供するプロセスである」といいます。
アセスメントでのデータや情報は、コンサルテーション・チーム支援会議で活用しながら進めることが肝要です。データに基づく理論的分析を土台として行われる実践を「エビデンスに基づく実践」(Evidence Based Practice : EBP)といい、今後の教育の方向性になっていくと思われます。
 ① 行動観察 
 行動観察では、授業、休み時間、給食、そうじ、学校行事(体育祭、学校祭、合唱コンクール)など、学校では子供を観察できる場面は多岐にわたります。
 欠席、遅刻が多くなる、成績が急に下がる、友達関係が変化する、服装・頭髪が派手になるなど、子供たちの日常生活の状況から、変化のサインを発見することが大切です。
 ② 生態学的アセスメント
 子供と環境を考えるうえで、ユリー・ブロンフェンブレンナー(Urie Bronfenbrenner,1979)の生態学的発達理論が参考になります。子供が生活する場である家庭・学校・学級からの影響(マイクロシステム)、家庭と学校の関係性の影響(メゾシステム)などがあります。また、子供の資質、能力、特技、関心など支援につながるプラス面もリソースとして把握することが大切です。
 ③ 心理検査
 SCのアセスメントでは心理検査があります。代表的な心理検査の1つとして、「ウェクスラー式知能検査」があり、その中でも「WISC-IV(ウィスク・フォー)」は、世界各地で使用されている児童用の知能検査として、全体的な知的能力や記憶・処理に関する能力を測ることができるため、発達障害の診断やサポートに活用されています。他にも、エゴグラム、バウムテスト、KABCなどもあります。
 次に学校での実施が広まっている、Q-U、アセスをみてみましょう。
(2)Q-U・アセスでのアセスメント
 ① Q-U(Questionnaire-Utilities)
 河村(2000)が開発したQ-U(Questionnaire-Utilities)(図3.1)では、学校生活意欲と学級満足度がわかり、学級経営のための有効な資料が得られ、学級診断アセスメントとして活用できます。
 児童生徒が所属する学級集団に居心地のよさを感じるのは、トラブルやいじめなどがなくリラックスできている「被侵害得点」、自分がクラスメイトから受け入れられ、考え方や感情が大切にされていると感じられる「承認得点」という、2つの視点から満足度を測定しています。
 ② アセス
 栗原・井上(2009)が開発した、アセス(学校環境適応感尺度Adaptation Scale for School Environments on. Six Spheres)(図3.2)は、学校適応感理論をもとに、「生活満足感」、「学習的適応」、「対人的適応」などの観点から学校適応感をとらえます。
 これらのアセスメントツールでは、SOSを出している子供を早期に発見できます。学年会、生徒指導部会やチーム支援会議で、「いつ、どこで、だれが、どんな支援をするのか」を決め、次回の打ち合わせでどのような変化があったのかを確認することが効果的な活用方法です。(3) カウンセリング
 カウンセリングといえば、専門家が精神的な問題を抱える人に対して、治療するイメージがあると思います。学校カウンセリングでは、人間関係の悩み、勉強や進路、家族のことなど相談は多岐にわたります。
学校カウンセリングは、「子供が学校生活を通してさまざまな課題に取り組む過程で出会う問題状況や危機状況の解決を援助し、子供の成長を促進する援助サービス」といいます(石隈,1999,2006)。
 カウンセリングも様々な流派がありますが、本書では、来談者中心療法、ブリーフセラピー、認知行動療法、選択理論を紹介しています。
 国分(1981)は、今やひとつのカウンセリング理論だけを信奉する時代は去った。複数の理論にふれながら、それを自分なりに統合せよと、著者は折衷主義を提唱しています。教師は、性格・特性・持ち味も違います。様々まカウンセリング技法を学び、自分にあったカウンセリング技法を取得することが大切だと思います。学校カウンセリングは学校教育相談とほぼ同義で、子供たちの問題や悩みへの適応支援としてだけではなく、成長支援の技法としても重要なのです。
(4) コンサルテーション
 コンサルテーションとは、「異なった専門性や役割を持つ者同士が、それぞれの専門性や役割に基づき、特定の援助対象の問題状況と援助の実情について検討し、今後の援助の在り方について話し合うプロセス(作戦会議)」です(石隈,1999)。校長・教頭・学年主任・担任・教科担当教員・養護教諭・部活動担当教員・SC・SSWなどが、特定の子供や状況について、「私の立場から見ると、こんな状況だと思います」ということを相互に対等の立場で意見を交流し対応方法を検討します。会議の目的は、いつ、どこで、誰が、何をするかを検討し、みんなが「それでやってみましょう」という着地点を見いだすことです。
(5) チーム支援会議
 チーム支援会議では、学級担任や情報を持つ教員が事例報告を行い、情報の共有化を目指します。情報収集では、「体育の時だけ保健室に行く」「月曜日に欠席が多い」などの情報からは、子供の抱える問題・悩みを検討します。
 生徒の欠席・遅刻・早退や保健室利用時の時間割の把握、部活動顧問、音楽や体育など座学以外の教科からの情報収集で、総合的に生徒理解します。
 チーム支援会議参加者から学習状況、交友関係、家庭環境など、様々な質問を受け、該当生徒の情報が共有化され、わかっている情報とわからない情報の整理をする。整理された情報を基に、該当生徒の見立てをし、事例分析つまり、生徒理解を行います。
 大まかな流れとしては、まず当面の見通しを立て、次回のチーム支援会議までの支援方針と役割分担を決め、「いつ、どこでだれが、何をするのか」役割分担し、それらを記録しておきます。そして次回のチーム支援会議の時間・場所の確認をして次につなげていきます。栗原(2020)は、ケース会議の司会とポイントとコツを示しています。

ケース会議の司会とポイントとコツ(栗原,2020)
  会議の内容のポイント 会議の進行のコツ
① 情報の共有10分 ・事例の概要を理解しよう
・担任の「困っている点」と「気持ち」を確認しよう
・傾聴したら。司会がリードして質問をする
・担任の思いを聞き取る
② 理解の共有5分 ・原因分析だけでなく、問題が維持されている理由も探ろう ・間違っても、後日修正すればよいので、今のこころの仮説くらいの気持ちで、意見を出す
③ 方針の共有5分 ・どうなったら、「うれしい」のが大事
・本人には? 学級には? 保護者には?
・当面の具体的な「ゴール」をまずは決める
・ここ数週間の方針でくらいの気持ちで
・方針を2~4個。保護者には、クラスには、本人には・・といった感じで説明する
④ 役割の役割
(具体的支援策の検討)
17分
・まずはアイデアを産出しよう
<変化のために必要なものは?>
<本人の願い、行動の目的は?
<本人や周囲のリソースを大事に>
・実行可能な解決案に練り上げる
・誰が、いつ、何をやるのか(分担)
・ブレーンストーミング。量が勝負
・統合の観点
・担任を支えるという視点で
⑤ 次回の会議 日時の決定  3分    ・会議と曜日とじかんを決めておくとラク
・守秘義務の確認

 最近は、教員人事で、若い教員が大幅に増加しているが、彼らは生徒指導の経験が少なく、生徒理解の方法・技術も持ち合わせていない場合もある。そこでチーム支援会議を生徒指導の伝承の場としてとらえ、敢えて記録係として参加させることも必要です。
(6) チームの守秘義務
 相談の秘密は守られるというのが守秘義務ですが、情報共有がないとチーム支援が成り立ちませんので、「チームでの守秘義務」という共通理解が必要です。
これは、スタッフ間では情報のやりとりを認め、支援者集団として秘密を保持するという考え方です。基本的にケース会議はこの考え方に立って進めます。
 チームでの守秘義務の範囲も考慮します。例えば、悩みがあり徹夜してしまった子供の場合、一般の先生方には「体調が相当に悪いので、授業中に机に伏しているかもしれません。それはサボっているわけではありませんので、見守っておいてください。」 と情報共有をします。養護教諭や関係する教員には、さらに詳しく報告し、必要があれば事実そのものを伝える場合もあります。
(7) 通告義務、報告義務
 通告義務や報告義務は、守秘義務より優先されます。例えば「通告義務」は、「児童虐待の防止等に関する法律」には、「虐待を受けたと思われる児童を発見した者」 は「速やかに」「児童相談所に通告しなければならない」とあります(第6条)。
 「報告義務」は、いじめ等の重大事態について、地方公共団体の長に報告する法的義務を負います。そのため、校長が知らないわけにはいきません。
 このように子供の支援にあたっては、守秘義務を尊重しながらも、通告義務や報告義務を踏まえて行動することが求められます。

関連記事