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最先端のネットいじめ・ネットトラブル対応2~大人が知らない子供たちのネットの世界~

 目次
1.ネットオフラインキャンプ

2.ケータイ・ネイティブ2世

3.ケータイ使用時間と全国学力テスト
4.インターネットと性非行
 (1) 出会い系サイトによる被害
 (2) SNSサイトによる被害
 (3) 被害児童児数が多いサイトはどこ?
5.援助交際とSNS
6.ウソ告

1.ネットオフラインキャンプ

 私は、様々な取り組みの中で「オフラインキャンプ」というイベントを行っています。参加するのは子供が20人程と、その保護者、そして私の大学の学生が数名です。
 姫路港から船に乗り、瀬戸内海の無人島である家島に向かい4泊5日の日程でキャンプを行いますが、子供たちは全員がネット依存であり不登校の状態になっています。
 ネット依存のゆえに不登校になったのか、不登校になったからネットに依存しているのかは不明ですが、子供たちにどのくらいネットをやっているのかを尋ねると平均して約10時間です。もっと多いと21時間という子もいます。それこそ寝ないでやっています。みんな小柄で身体があまり発達していないように思います。
 ネット依存の子で仰天したことがあります。ゲーム料金の支払いを「課金」と言いますが、キャンプに参加した子の中で一番課金が多かったのは何と700万円です。凄い金額ですよね。お父さんが会社の社長であるというその子は、自宅を兼ねた会社事務所の金庫が見える場所に自分でカメラを設置し、その金庫の鍵の開錠方法を撮影して自分で把握しました。そして、その金庫を自分で開けて現金を抜き取り700万円を課金したのです。何も知らないお父さんは警察に被害届を出しましたが、自分の息子の犯行であることを、後に知らされたのです。
 私の所に来る子の中には、ネットゲームの世界大会でアジアの53位にランキングされるなど高いゲームスキルを持つ子もいます。性能の優れたヘッドフォンをしていれば、音だけで左右を判断できますので、ゲーム中の画面を見ずに、目を瞑ってもやることができる子なのです。そんな子が、親に「お前、学校行ってくれよ」と言われたらカッとして親を殴ってしまう。親御さんもどうして良いのか分からず、藁にも縋る思いで私の所に連れて来るという感じです。
 私達はネットを超越する楽しい世界があることを子供たちに教えています。島でのキャンプ生活で、カヌーや魚釣りを楽しみ、チームビルディングやピアサポートを通じて、自己理解や他者理解を深め、コミュニケーションスキルを高めることを目指しています。
 以下の写真は、私のゼミの学生が、子供たちと一緒に魚をさばいて、料理を作り、食事をしている写真です。そして、夜になると、キャンプファイヤーをしたり、カウンセリングを行っています。
 このキャンプでは、あえて1時間だけネットを使える部屋を用意してあります。この家島は無人島で、本来ならばネットが使えませんが、NTTドコモと組んでキャンプをしていますので、小豆島の電波を拡張する形で利用できるよう整えています。
 そして、私達大人はあまり干渉しないよう子供たちどうしでトランプしようとか、ドッジボールやろうとか、ボール遊びをやろうとか、葛藤するような場面を設定しています。
言い換えれば、ゲームをするか、生のコミュニケーションをとるか、子供たち自身で考え、自主的に決めさせるのです。
 最初は、全員がネット部屋に行って、満杯になりました が、だんだんと心が打ち解けて、生のコミュニケーションのほうが楽しいと分かってくると、ネット部屋に行く子供は、その後、減っていきました。
 日常生活に戻ると、このキャンプによって培われた能力や、社会的素養が崩れてしまうこともあります。そのようなことを防ぐために、保護者の皆様ともカウンセリングを行い、今後はこのような約束でやっていきましょうと協力頂いております。保護者の皆様全員にご参加頂く理由は、ここにあります。
 これが「私流」の現在の取り組みです。ネット依存の問題は、ここまで徹底しないと自分の力では抜けられません。そして、将来的に深刻な事態を引き起こします。

2.ケータイ・ネイティブ2世


 私は、兵庫県のある小さなA町で携帯電話とスマホの所持率に関する調査を行っています。高校生が98%以上であるのは納得済みですが、私が知りたかったのは小学校の1年生から3年生の携帯電話所持率です。
 調査を進めると、この世代から、家に固定式電話が設置されていないことが分かりました。言い換えればこの世代は、生まれた時から携帯電話しかないのです。これは学校の先生方も同じで、今では8割ほどが、携帯電話しか持っていません。
 このような世代は「ケータイ・ネイティブ2世」と呼ばれます。家に固定式電話がありませんので、親も子供も携帯電話でしか連絡がとれません。今は、犯罪や防災に対する意識が高まっていますので、子供にはみんな持たせています。だからこそ、携帯電話に潜む問題を明らかにする必要があります。

3.ケータイ使用時間と全国学力テスト

 上の折れグラフは、携帯電話の使用時間と、全国学力テストの成績の相関を示したものです。 
 横軸には携帯電話の使用時間、縦軸には全国学力テストの中学数学Bと小学国語Bの正答率が取られています。携帯電話を長時間使用すれば、ネットの世界に嵌り込み、勉強時間が減りますので、当然ですが成績は悪くなります。
 今の子供たちは、部活が終わって家に帰ると18時を過ぎますので、夕食と入浴を済ませると20時前後になります。それから4時間くらい携帯電話を使用すれば0時を回り、勉強時間が十分に取れず、睡眠時間も不足します。勉強を疎かにして、携帯電話に嵌り込んだ状況が続くと、朝ギリギリまで寝ているため、朝食も取らずに登校したり、遅刻が増えます。授業中は睡魔に襲われて集中力が下がり、イライラしてキレやすくなり、学校生活が乱れていきます。
 その結果、学力が著しく下がります。そうなると勉強をする気も失せてしまいますので、更に携帯に嵌っていきます。そのような悪循環を断ち切るため、家庭生活において健全な流れに変えていかないと、後々、後悔するような事態を招くことになります。

 上のグラフは、低年齢の子供のインターネット利用率を調査した内閣府のデータです。
 青色のグラフはインターネットに接続することができる機器の利用率、赤色のグラフはそれらの機器を使用して、インターネットを利用している割合です。
 
機器の利用率はスマートフォンやタブレット、携帯などを利用している割合で、3.1%から始まり、最も高い割合は89.9%です。す。インターネット利用率も3.1%から始まり、最も高い割合は65.8%です。
 この調査の横軸は年齢で、一番低いのは0歳、右に進むにつれて1歳ずつ加齢し、右端は9歳です。この世に「オギャー」と産声を上げた時から携帯を手にしている、それが現代の日本の姿なのです。
 私たち教師は、この現実を直視した上で、子供たちと向き合っていかなければならないのです。
 例えば、小学校1年生のインターネット利用率は約45%です。タブレットや携帯などの所持率も70%近くになります。小学校4年生になると、インターネット利用率は65%を超え、タブレットや携帯などの所持率も90%近くになります。この現状に、私たち教師がどんどん遅れを取っているのが現状です。
 今の親御さんは、簡単に子供に携帯を与えますが、「Webフィルタリング」についても、理解を深めて頂きたいと思います。Webフィルタリングは「URLフィルタリング」とも呼ばれていますが、アダルトサイトや薬物・犯罪に関するWebサイトなどのように、職務上または教育上、閲覧することが不適切なインターネット上のWebサイトをフィルタリングし、ユーザーに見せなくすることを指しています。
 このWebフィルタリングには「ホワイトリスト方式」と「ブラックリスト方式」の2種類があります。
 前者は、アクセスを許可するWebサイトの一覧を予め登録しておき、登録されたWebサイト以外に、一切アクセスさせない方式です。後者は、ブロックするWebサイトの一覧をあらかじめ登録しておき、登録されたWebサイトに一切アクセスさせない方式です。
 「ホワイトリスト方式」には、有害なWebサイトを確実に遮断できるというメリットがありますが、登録されたWebサイトしか見られないため、インターネット利用の幅が狭くなるデメリットがあります。
 「ブラックリスト方式」は、インターネット利用の幅を狭めずに利用できるメリットがありますが、最新の有害なWebサイトを、常に登録しておかなければならないというデメリットがあります。
 Webフィルタリングのメリットやデメリットを含め、子供たちが、安全にインターネットを利用することができる環境について、私たち教師も、幅広い知識を持って支援していく必要があると思います。

4.インターネットと性非行

 上の図は、警察庁がまとめた、性被害の実態を示したデータです。出会い系サイトは規制が厳しくなり、その被害が激減しています。2018年だけで見ると出会い系サイトによる性被害は29件です。しかし、SNSによる被害は1,813件と急増しています。
 SNSと言えば「ツイッター」「フェイスブック」「インスタグラム」や「LINE」「ティックトック」そして小学生・中高校生に多い「カカオトーク」がなど挙げられます。

(1) 出会い系サイトによる被害

 法的な規制が厳しくなったことで、出会い系サイトによる性被害は急激に減っています。
 しかし、驚きを隠せないのは、11歳以下とか12歳、つまり小学生でも被害に遭っているということです。

(2) SNSサイトによる被害

 SNSによる被害で最も多いのは高校生で、およそ1,000件、中学生で700件弱、小学生は41件です。
 高校生と中学生で被害の9割を占めていますが、このデータを見る限り、SNSは小学生をも性犯罪に巻き込むという危険な側面を浮き彫りにしています。

(3) 被害児童児数が多いサイトはどこ?

 上のデータは、平成28年と平成29年に関して、 被害児童数が多いサイトを示したデータです。
 最も多いサイトは「ツイッター」、次いで「LINE」と「ぎゃるる」が並び、「ツイキャス」があります。
 そして、「ツイッター」同様に今後も増えると予想されているのが、空欄で示した「ひま部」と呼ばれるサイトです。これは文字通り、暇を持て余した児童や生徒が集うサイトなのです。
 この「ひま部」には、小学校の高学年から中学生、高校生が多数集まっています。そのため、犯罪に巻き込まれる可能性が高いと懸念されています。もし、子供たちの会話の中で「ひま部」という会話が出てきたら、アンテナを張って注意しておくと良いです。
 その理由としては、小学生や中高生が多いことに目を付けた中高年の男性が、簡単に入り込んで来るからです。本当は40から50歳の男性が、ネット上で拾い集めたイケメンの写真を添付するなどして、「僕こんな感じだけど、お話に入って良いですか」と騙します。話が盛り上がったところで「会おうよ」と誘います。イケメンに会えると楽しみにしている児童・生徒が性犯罪に巻き込まれるという流れです。
 また「ひま部」の中で多いのは中高年の男性が女の子に成りすます状況です。これは「ひま部」だけではなく「ツイッター」や「ぎゃるる」も同様です。女の子に成りすまして女の子と仲良くなるのです。そして、「私の写真を送るね」「私の裸も送るね」などとほのめかし、「あなたも送ってね」と言います。
 相手の女の子を騙して裸体の写真を手に入れた中高年の男性は、リベンジポルノや写真の売買などにそれらを悪用するというパターンが非常に多いのです。
 他の手口としては、「これからみんなで会おうよ」などと、自分が指定した場所に女の子を誘い出し、中高年の男性はその場所に車で乗り付けます。そして、待ち合わせた場所で2人は顔を合わせますが、女の子は「あれ?おじさんだ」と警戒します。すると、中高年の男性は「うちの娘が友だちなんだよね」と嘘をついて女の子を安心させます。そして「娘が待っているから家まで送ってあげるね」と騙して、車に乗せるという、正に誘拐さながらの手口なのです。このような手口を知れば、親御さんも先生方も気が気ではなくなると思います。

5.援助交際とSNS

 そして、夏休みに入ると急増するのが援助交際です。「JK、夏休みだけ援します」というセリフで援助交際を宣言します。ハッシュタグで「援」「円」「パパ活」などを検索すれば、援助交際を希望する女子高生と、簡単に交流することができます。 ダイレクトメッセージはツイッターの機能の1つで、電子メールのように特定の相手だけに向けて送られる非公開のメッセージです。外部から確認できないので、親御さんは何も分かりません。

6.ウソ告

 今は、LINEの中のいじめの1つとして「ウソ告」というのがあります。文字通り「ウソの告白」をします。例えば、「俺、お前のこと好きだから。公園に来て」などと告げます。女の子はドキドキしながら行きます。ところが公園には誰もいません。その子は陰で写真を撮られ「ウソだよ。お前、騙されたな」と非情なメールを送り付けられます。その後、女の子の写真は拡散され、笑い者にされて、いじめの対象にされるのです。
 このLINEに関しては、大規模な調査が行われたことがあり、「LINEなどでの告白をどう思うか?」また「LINEなどでの謝罪をどう思うか?」という質問に対する回答が注目されました。結論から言えば、今の子供たちはLINEによる告白が圧倒的に多く、その比率は6割にも及びます。先述したSNSの種類の中でもLINEは日常生活にかなり浸透していますので、告白は容認されています。
 LINEの中で交流が芽生える一方、LINEの中でトラブルが発生しているのも事実です。もし何らかのトラブルが発生した場合、LINEの中で謝罪する。これが許容されるか否かですが、子供たちの間では66%近くが容認されています。
 今や、日常生活における行動がLINEを中心として回っています。言い換えれば、SNSを中心とした世界の中で、子供たちは毎日、一喜一憂しているのです。

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