MLA(マルチレベルアプローチ)の成功事例

 目次
1.集団から集合へ、集合を集団に
 (1) 群れる子供たち
 (2) 「集合」から「集団」への取り組み
 (3) 自律性のある「集団」とは
2.いじめ防止6時間プログラム
3.これまでの実践からいえること ~変える必要がある「学校のあり方」~
4.包括的学校支援プログラムの構造図
 (1) 包括的学校支援プログラム
 (2) 教育現場を知らない文部科学省
5.総社警察署管内の検挙・補導数 ~包括的学校支援プログラム導入で減少する「非行」~
6.小6~中3の不登校児童生徒数 ~包括的学校支援プログラム導入で減少する「不登校」~
7.包括的学校支援プログラム導入で躍進する「学力」
8.包括的学校支援プログラム導入で低下する「保健室の来室状況」

1.集団から集合へ、集合を集団に

(1) 群れる子供たち
 今の子供たちは、単に集まっているだけで、集団を形成していない可能性があります。皆様のクラスはどうでしょうか。まとまりがありますか?一体感がありますか?一体感のあるクラスを受け持った時は、すごく充実しているような気がしませんか。子供たちに、何でも話が通ったり、何でも行事が盛り上がっていったり。また、不登校の子がいても、皆が支える学級もあります。学年でも同じです。一体感があると凄く楽しいものです。
(2) 「集合」から「集団」への取り組み
 今の子供たちは友達の家に集まってゲームをしています。外で集まってもポータブルのゲームで遊んでいます。互いの意思疎通も図られないため、彼らには一体感がありません。
 このように目的や目標を具体的に共有することなく、単に集まって組織化されるものを「集合」と呼びます。一方、目的や目標を共有し、ある程度組織化された集まりのことを「集団」と呼びます。子供たちに必要なのは、この「集団」を形成するプロセスなのです。
(3)自律性のある「集団」とは
 「凝集性」が大きくなるにつれて、「まとまり」ができて「絆(きずな)」が深まります。「目標」が掲げられ「リーダーシップ」をとる子供を中心として、それぞれのメンバーの「士気」が高まります。相手に対する「思いやり」は「相互互助的関係」を形成します。
 そして「役割の分担」によって「責任感」が生まれます。クラスの中で選出される学級委員や生活委員は、ただ任命されているのではなく、使命感を持って自主的に行動します。
 そして、「クラスの中に何らかの基準が存在している」とすれば、これは重要なことで、「規範意識」が育っていることを表しています。これらが自律性のある「集団」であり、
 単に集まっているだけの「集合」とは全く異なることを意味しています。

2.いじめ防止6時間プログラム

 昨今の教育界は、いじめが大きな社会問題となっていますが、ここで、広島大学大学院教授の栗原慎二先生が中心となって執筆をされた「いじめ防止6時間プログラム」という文献を皆様に紹介したいと思います。実は私も部分的に執筆をさせて頂いておりますが、いじめが起きてからどのように対応すべきかではなく、「いじめの加害者を出さない指導」として、どのような総合学習が良いのか、あるいは道徳教育が相応しいのか、という観点から考察された斬新な内容となっています。是非、ご参考になさってください。

3.これまでの実践からいえること ~変える必要がある「学校のあり方」~

 いじめが起こってからどうしようと対応策を考えるのではなく、落ち着いた学校状況を作り出すことで、問題行動の全体が減少します。その中で「いじめ」も減少します。
 また「反社会的行動」の子供を少なくするのと「非社会的行動」の子供を少なくするのとでは、反社会的行動の子供を少なくするほうが容易です。彼らは愛情に飢えています。時間の許す限り、構ってあげることが大切です。
 不登校1%も「学校のあり方」次第で十分可能、とありますが、簡単に言えば、予防的なプログラムを、どのように教育課程に取り入れるかということです。
 学校の年間計画など教育課程を編成するのは4月ですが、その中に「いじめを予防するプログラム」や「不登校を予防するプログラム」がどれだけ入っているかということです。
 他にも「ネットいじめの問題を考えるプログラム」や「コミュニケーションを向上させるプログラム」などがどれだけ入っているか。このようなプログラムを何も入れないで、単にコミュニケーションがダメだと嘆いても、全く意味がありません。

4.包括的学校支援プログラムの構造図

(1) 包括的学校支援プログラム
 全ての子供たちに予防的なプログラムを実践するのが「1次支援」です。ここでの方略は、問題が出現しない予防的な学級・授業づくりを教育課程・年間計画で実施することです。 
 その内容は、協同学習やPBIS、ピアサポートやSELなどを中心として、進路のことや、学業のこと、心理的なこと、などの個人的なサポートも含んでいます。
 その上の段階に、問題を抱えている児童生徒に対する「2次支援」があります。これは、教師によるチーム支援や、児童生徒たちの力を活かしたピアサポートです。
 更に、非行や発達障がいなど、対応の難しい児童生徒への個別指導や関係機関との連携を視野に入れた対応が「3次支援」です。このような「1次支援」から「3次支援」までを「包括的学校支援プログラム」と呼んでいます。
(2) 教育現場を知らない文部科学省
 この「包括的学校支援プログラム」はアメリカやイギリス、香港、シンガポールなど、全世界で実践されている教育プログラムです。日本の教育現場が大変なのは、このようなプログラムを文部科学省が出さないからです。総合学習の時もそうでしたが、最終的には「各学校に任せます」という趣旨なのです。
 ところが、他の国々では「こんな風にやりますが、どうですか?」と強烈に出てきます。
 すると、勢い良く学校の中にプログラムが浸透します。学校教育を実際に経験して、苦労された方々が考えて作っているので宙に浮いた論理になっていないのです。言い換えれば、教師と同じ考え方を持っていて、これならできると思ったものを具現化しているのです。

5.総社警察署管内の検挙・補導数 ~包括的学校支援プログラム導入で減少する「非行」~

 これは、岡山県の総社警察署管内における中学生の検挙・補導数を示したグラフです。プログラム導入前は飲酒や喫煙、オートバイや自転車の窃盗、暴行など205人の中学生が警察のお世話になっていました。これがプログラム導入後は、一時的に増加した平成23年を除き、一貫して減少し続け、平成26年では6人にまで減っています。しかもこの6人は姫路市内の中学生でしたので、総社市では0でした。
 非行予防の観点でプログラムを導入すれば、学校が楽しくなりますので、非行を完全になくすことも可能であるということです。これは数字が物語っています。

6.小6~中3の不登校児童生徒数 ~包括的学校支援プログラム導入で減少する「不登校」~


 これは、総社市内の中学校の不登校出現率を示したグラフです。
 不登校のプログラムを導入する前、総社市の中学校における不登校出現率は、全国平均、岡山県全体の数値よりも高い値を示し、平成22年にピークを迎えます。しかし、不登校のプログラム導入後は、一貫して不登校出現率が減少し、平成24年以降は、全国平均と岡山県全体の数値よりも、大幅に低い値を呈するに至っています。

7.包括的学校支援プログラム導入で躍進する「学力」

 このグラフは岡山県内17市町村の4教科の学力を示したグラフです。2011年に平均点を大きく下回っていた総社市の学力は、翌年の2012年には堂々の1位へと躍進し、現在もそのトップの座を守り続けています。
 包括的学校支援プログラムを導入して実践すれば、学習効果が飛躍的に改善し、学力もトップになるということが、ここに証明されています。

8.包括的学校支援プログラム導入で低下する「保健室の来室状況」

 これは、ある小学校における保健室の来室状況を示したグラフです。2本のグラフのうち、上にあるグラフは包括的学校支援プログラムを導入していない場合で、下にあるグラフは包括的学校支援プログラムを導入した場合です。上にあるグラフを見ると4月には300人、5月には600人近くが来室しています。保健室の先生は猫の手も借りたいほど多忙です。
 しかし、下のグラフを見ると、同じ学校の状況とは思えないほど、一気に来室者が減少しているのがわかります。結論から言えば、包括的学校支援プログラムの導入によって、学校やクラスが楽しくなり、保健室に来る必要がなくなった児童が増えたのです。

関連記事