カウンセリングの技のまとめ~マイクロカウンセリング~

 目次
1.カウンセリングの流れ
2.マイクロカウンセリング
 (1) マイクロカウンセリングの概要
 (2) かかわり技法
  ① かかわり行動
  ② 質問技法
  ③ クライエント観察技法
  ④ はげまし
  ⑤ いいかえ技法
  ⑥ 要約技法
  ⑦ 感情の反映
  ⑧ 意味の反映

1.カウンセリングの流れ

 ウォルターとレノックス(Walter & Lenox,1994)は、カウンセリングにおける関係づくり、アセスメント、目標設定、援助的介入、終結決定という活動を、連続する直線上に段階的に位置づけるのではなく、それらの活動が援助の時間的な流れの中で同時に起きており、その相対的な重要度が変化するとしています。
 石隈(1999)によると、「初期」において教師やカウンセラーは子供との関係を作りながら、アセスメントを行う。続いて、アセスメントを行いながら援助目標を立て、援助的介入をゆっくりと初めて行く。終結決定が初期にもあるのは、子供とたまたま関わった援助者が、子供のニーズに応えられないと判断したとき、他の援助者に依頼することもあるからである。
 「中期」になると、信頼関係を維持しながら、介入を続けていく。ここでも介入をしながらアセスメントは続けていき、必要に応じて目標の修正や終結決定を行う。
 「後期」になると、もう一度アセスメントをていねいに行い、終結の決定を行う。「これで終結してよいか」「どう終結するか」「次の引き継ぎはどうするか」という問いに応える。
 さて、今まではカウンセリングのいくつかの理論と実践を学んできましたが、これらのカウンセリングで共通の技法をまとめたものをマイクロカウンセリングといいます。

2.マイクロカウンセリング

(1) マイクロカウンセリングの概要
 マイクロカウンセリングとは、1990年代にアレン・E・アイビィ(Allen E. Ivey,1985)によって開発されました。アイビィは、いろいろなカウンセリングに関わるうちに、多くのカウンセリングに一貫してみられる共通のパターンがあることに気づきました。そこでは「マイクロ技法の階層表」(福原,アイビィ,2004)にまとめました。マイクロカウンセリングの技法は、クライアントの利益を最優先してカウンセリングを行うという実践的かつ体系的な技法であり、特定の学派・技法にこだわらずに柔軟に方法論を組み合わせるという折衷主義の特徴を持っています。

(2) かかわり技法
 言語レベルの傾聴法です。クライエントの枠組みに沿ったものでなければなりません。かかわり技法には、開かれた質問、閉ざされた質問、はげまし、いいかえ、要約、感情の反映、意味の反映などがあります。
 ➀かかわり行動
  カウンセラーは、クライエントの話を丁寧に「聴く」ことが重要です。本章では、カウンセラーを教師に、クライエントを子供や保護者に読み替えて頂ければと思います。かかわり行動はカウンセリングの基本であり、クライエントとのコミュニケーションの成立に必要不可欠です。
  かかわり行動には、視線の合わせ方、言語的追跡、身体言語、声の質が含まれます。視線の合わせ方とは、クライエント(子供)がこのカウンセラー(教師)が、私の話をしっかり聴こうとしていることがわかることが大切です。目線の合わせ方は、直視がいいとは限りません。性別・年齢・人種によっても異なります。声の質、声の調子、話す早さは、状況によって変化させることが大切です。言語的追跡とは、クライエントの話の主題を変えないことです。身体言語とは、少し前かがみの姿勢と表情、励ましのジェスチャーを示して聴くことです。
 ➁質問技法
  開かれた質問、閉ざされた質問の2つがあります。話の内容を掘り下げたり、聞き手がその内容をより深く理解するための方法のひとつです。
 ・閉ざされた質問(Closed Question)
 「あなたは、ゲームが好きですか?」 
 「あなたは、朝食を食べてきましたか?」
 YESかNO、1語2語で答える質問のため話が続き難いことがあります。年少の子供や発達に課題がある子供には、有効的な質問の場合もあります。
 ・開かれた質問(Open Question)
 「あなたはどんなことで困っているのかな?」   
 「もう少し、詳しく話してくれませんか?」                           
  いろいろな答えが予想され、話を広げていくことができます。質問によって様々な情報(事実、感情、情報、理由)をもたらすことができます。
 ➂ クライエント観察技法
  具体的技法は、視線の合わせ方、体位・席のとり方、声の調子、表情、ジェスチャー、言語的追跡(話題を変えないこと)など、非言語的コミュニケーションも含まれます。
  カウンセリングを成立させるためには、言語・非言語のコミュニケーションで、カウンセンラーとクライエントの間で何が起こっているかを観察することが大切です。例えば、言語のコミュニケーションでは、クライエントはカウンセラーが聴きたいことだけを話していることもあります。非言語のコミュニケーションでは、防衛的な子供は、カバンを手前で抱え背中を丸めて席に座っていることもあります。攻撃的な子供は、足や腕を組み、ふんぞり返る姿勢をとることもあります。教師と子供の関係性は、パーソナルスペース、態度でも表現されます。
 ➃ はげまし
  励ましとは、「頑張って」という意味ではありません。最小限のはげましと言った方がいいかもしれません。はげまし技法では、クライエントに話を続けることを促す非言語と言語によるものがあります。うなづき、手を広げたジェスチャー、「それで」「うんうん」といったフレーズ、クライエントが使うキーワードの繰り返しなどです。カウンセラーがクライエントの話に、ついていこうとすることを示すことです。
 ➄ いいかえ技法
  いいかえ技法では、今、話をしたエッセンスをクライエントにフィードバックします。カウンセラーは、クライエントに言ったことばを、短縮し明確にします。生徒「オレ、学校に行けなくて、辛いです」、先生「○○君は、学校に行けなくて辛いんだね」と生徒に使った言葉で言いかえます。復唱することによってクライエントを支持する技法です。
 ➅ 要約技法
  要約技法は、いいかえ技法に似ています。クライエントの話が何度も繰り返させる場合や、話が長くとりとめがなく混乱しているクライアントの話を要約して返してあげることです。カウンセラーというフィルターを通してポイントをずらさないで返すことが重要です。
  事実の要約では、「〇〇さんのし➇て来たことは、・・・なことなんだね」。感情の要約では、「〇〇さんの今の気持ちは、・・・な感じなんだね」と要約することによって、クライアントの考えが整理できていきます。
  要約技法では、何が起こっているかを明確にまとめ、面接に方向付けと一貫性を与えることが大切です。要約はクライエントとカウンセラーが、面接で何が起こっているかについての考えを整理・統合してするのに役立ちます。
 ➆ 感情の反映
  感情の反映とは、相手の感情や情動に気づき、それを相手に伝えることです。これがうまくいけば、相手はもっとも大きな安心を得ることができます。クライエントの感情の世界を正確に感じとることができれば、援助活動において最も基本的である共感を高める効果につながります。
  感情の反映とは、「あなたは・・・と感じているようですね」「あなたは・・・と感じているように聞こえますが。」というようにクライエントの話すことの情緒的な側面に焦点をおきます。感情の反映では、クライエントが自身の感情に気づくのを助ける、クライエントが経験している内的世界を面接者が理解しているということが大切です。
 ➇ 意味の反映
  意味の反映とは、生活体験に隠された真髄、その「意味」「価値」「意図」を明確にするための技法です。クライエントの発言や行動には意味があります。クライエントの感情や思考、行動の背景にある、意味を見出すことを援助していきます。いわば、クライエントが「生きる意味」を言語化していくプロセスを共有するわけです。カウンセラーは、次のように意味を反映していきます。
  「それはあなたにとってどんな意味をもちますか?」
  「それはあなたにとって重要なのですか?」
  生活体験に隠れた個人の意味を見出す役割を果たします。

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