学校を再生しつづける校内研修~実践的校内研修の3つの方法~
目次
1.校内研修は元気の出る作戦会議の場
2.土台づくりの校内研修会
3.学校の課題解決とネットワークづくりの校内研修
4.事例研修とロールプレイ体験型の校内研修
5.研修会を成功させるために
1.校内研修は元気の出る作戦会議の場
以前、生徒指導の極めて困難な学校に勤務したことがありました。そのような学校での生徒指導は、教育相談という後方支援の充実があってこそ成り立ちます。また、生徒指導におけるホームランバッターが一人いる学校より、全員が3割バッターのほうが力あると思います。この後方支援作り、3割バッター作りが、校内研修ではないでしょうか。
校内研修会は、「役に立つ」「おもしろい」「すぐ実践できるかもしれない」「元気が出てきた」などの感想をもたれるものでなければなりません。外部から大学教授や精神科医を招いて、講演会形式の研修会を企画しても、あまり役に立たない場合があります。学校が直面する問題に対して、一般論や概論であったり、医療モデルと教育臨床モデルの違いの認識不足があったりするからです。
校内研修会は、学校全体の作戦会議と技量向上の場、ネットワークづくりとして押さえています。
2.土台づくりの校内研修会
4月には、転勤などで教師の構成や生徒指導や教育相談の担当者も変わります。入学式前は土台作りとしての校内研修会が必要です。本校の生徒指導、教育相談の体制の確認を、転勤してきた新しい仲間に、また再確認の意味で全教師に実施していきました。
例えば、服装指導一つをとっても、「○○先生はいいって言っていたのに」となっては、指導のラインが混乱し、生徒が不信感をもちます。指導のラインは統一されていなければなりません。しかし、指導方法は教師のパーソナリティーに応じて、それぞれの持ち味があっていいと考えています。
また、教育相談室の利用システムも全体にPRする必要があります。学校間暴力発生の対応方法、関係機関との連携状況、心理検査による本校の課題提示、校内ネットワークの在り方、不登校生徒の教育相談室や保健室登校の在り方など、よくいわれる「共通理解」をつくり上げ、校内体制を機能させることが目的となります。
3.学校の課題解決とネットワークづくりの校内研修
研修会では、毎回テーマを決めて取り組んでいます。
例えば、不登校の問題では、教育研究所の相談員や精神科医に講演を依頼します。テーマは概論や一般論にならないように、具体的にお願いします。
精神科医には、「神経症的不登校の発生のメカニズムと医療機関との連携の在り方」などとしました。
例えば、非行を繰り返す怠学傾向の不登校となると、精神科医といえども臨床経験が少ないためか、一般論や概論的になりがちなためです。その後、実際に本校生徒がその精神科医にお世話になっている事例を基に事例検討を進め、連携の在り方を模索します。
児童相談所などから講師を招く際も、前半は「少年法と児童福祉法」などのかなり専門的講演、後半はその機関に実際に連携している生徒の事例検討を行います。
本校生徒がかかわっている関係機関との事例研究であり、より具体的なために、研修会の参加意識も高くなります。
例えば、医療機関との連携では、「お互いできること」「できないこと」を、研修会を通して深めていきました。
事例検討会では、当初精神科医から乳幼児期の細やかな生育歴、治療構造などの医療モデルの質問が見られました。しかし、しだいに教育モデルのカウンセリングという領域の尊重が見られました。このように、地域の関係機関とのネットワークづくりも研修会のねらいとしています。
また、校内研修も回を重ねるごとに、「不登校の昼夜逆転現象はなぜ起こるのか」「少年審判の保護観察や試験観察の違い」などを校内で説明する必要が減少しました。つまり、コンサルテーション(作戦会議)においても、用語や心理的メカニズムが教師間で共通のものとなりました。このことは、学校全体の生徒指導、教師相談のレベルの向上につながっています。
4.事例研修とロールプレイ体験型の校内研修
事例研修会は、インシデントプロセス法、シカゴ方式、埼玉県立南教育センターA式など優れたものがありますが、日本学校教育相談学会北海道支部では、北海道方式と名付けてもよい独自の事例研修会を開催しています。本校でも、これを基に事例研修会を行っています。右記の事例研修方式とロールプレーを組み合わせたものです。
前半は、インシデントプロセス法、シカゴ方式を基本とした事例研修で一時間程度行います。事例は現在抱えている進行事例で、実際の対応プログラムをプランニングし、校内のネットワークの活用も検討します。
(1) 事例の発表者は、事例を20行程度にまとめ、その資料を配布する。
(2) 5~6人のグループで事例に関する客観的情報を収集するための質問をまとめる。
(3) 各グループで事例に関する質問を3回ずつする。
(4) グループ全体の質問が一巡りしても、また、質問がある場合は同じように質問していく。
(5) 質問が終わったら、用紙に各自分が対応プログラムをまとめる。緊急・早期・長期対応に分け、担任や教育相談係り、養護教諭、学年の教師、部活の顧問などその生徒にかかわることができる人や組織が具体的に何を行うか、配布した表にまとめる。
(6) その後、グループごとに、対応プログラムを作成する。
この事例検討会は、グループでの討議も多く、教師自身が対応プログラムを作成するための参加意識が高まります。また、事例を超えている教師をネットワークの中で支える雰囲気づくりができます。
後半は、事例提供者にその事例の生徒(クライアント)になってもらい、いろいろな立場の教師(担任・教育相談係・養護教諭など)がカウンセラーとなってロールプレーを行います。担任以外の教師が担任役をやってもかまいません。
これによりカウンセリングの技量の向上ばかりでなく、自分の対応の仕方への気づきも出てきます。シェアリング(ロールプレー後の)話し合いの中で、かかわることの難しさを感じ取り、抱えている事例の生徒役に教師がなることで、彼らへの理解が深まっていきます。
5.研修会を成功させるために
この研修会のスタイルを行うには、まず、教育相談関係が地域の関係機関と十分信頼をおけるネットワークを作り上げることが必要です。それにより、関係機関とかかわる本校生徒の事例検討会ができるのです。まず、児童相談所などのネットワークは、靴を減らす生徒指導から、また、医療機関とのネットワークは、精神医学領域の研修会に参加して作っていきました。
その際、必ず学校の仲間と一緒に行くことが大切です。ネットワークは複線化しておいたほうがよいからです。研修会では、その仲間たちがロールプレーを進んで引き受けてくれました。
研修会では、①事例発表者の役に立ちたいという思いを大切にする。②事例についての守秘義務を守る。③専門家のケースカンファレンスも取り入れる。④研修会汎性アンケートを実施し、その結果を報告する。⑤研修会の内容は、広報誌にまとめすぐ出す。➅研修内容のニーズを調査し、次回につなげる。
以上のようなことが、研修会を運営していくことについて必要と考えています。
研修会の運営者は、学校全体を視野に入れたコーディネーターとなる必要があります。人は夢や希望があると耐えることができます。研修会には、参加者や夢や希望を感じられるものにしたいものです。