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教育における学校心理学・臨床心理学の理論1~来談者中心療法・選択理論~

 目次
1.カウンセリング・学校教育相談の教育への導入
 (1) 学校教育での誤解
 (2) 教育相談の本質
 (3) 折衷主義的カウンセリング
2.来談者中心療法
 (1) 来談者中心療法の概要
 (2) 来談者中心療法の3条件
  ① 受容(条件の肯定的配慮)

  ② 共感(共感的理解)
  ③ 自己一致(純粋性)
 (3) 来談者中心療法ができるまで
 (4) ロジャーズの結論
3.選択理論
 (1) 選択理論の概要
 (2) 選択理論と従来のカウンセリングとの違い
 (3) 自己の「選択」の気づきから「再選択」へ

 学校で最も役に立つと思われる、来談者中心療法、選択理論、ブリーフセラピー、認知行動療法について解説していきます。
 1つのカウンセリング技法にこだわるのではなく、様々な技法を学んでいきましょう。人には1人1人、性格の違いや個性や持ち味があります。広くカウンセリングを学んだ後、自分の性格、個性にあったカウンセリングを深く学ばれるとよいかと思われます。

1.カウンセリング・学校教育相談の教育への導入

(1) 学校教育での誤解
 教育相談の在り方の議論は、教育相談の歴史とともに推移してきました。教育相談の典型的な批判は、「教育相談は甘い」「手ぬるい」というものです。「教育相談は生徒指導には役に立たない」「善悪の区別は分からせるべきだ。ただ聞くことに努めても何にもならない」という指摘を受けていたこともありました。教育相談という言葉には、カウンセリングも含まれています。つまり「カウンセリングしたって、何にも変わっていない」「非行生徒には、カウンセリングは使えない」と言い換えることもできます。
 実際はどうでしょうか。真の教育相談やカウンセリングとは、児童生徒を現実に対峙させ自己実現を図ることです(金山,2000)。
(2) 教育相談の本質
 教育相談では、相談場面を通して、今のままの自分でいいのか、人間として生きるとはどういうことなのかを教師と児童生徒が真剣に向き合って一緒に考えていきます。教育相談とは、児童生徒が自分自身の体験と感情を明確に意識し、その中で自己選択・決断・責任を自ら引き受けるように援助するプロセスです。
 しかし、なぜ教育相談は批判を浴びることとなったのでしょうか。それは、1つのカウンセリングの技法に執着しすぎたり、閉ざされた教育相談室の中だけで相談を展開し、不登校などの非社会的な児童生徒だけに対応していたからに他なりません。現実に対峙する教育相談とは、複数のカウンセリングの技法を身に付け、児童生徒に適した援助方法を展開でき、かつ、教育相談室に閉じこもるのではなく、学級経営、授業、進路指導、生徒指導、教師への援助、保護者への援助、関係機関との連携などもできることです。
(3) 折衷主義的カウンセリング
 子供たちは、いじめ・不登校・非行だけでなく、虐待・発達障害・愛着障害など様々な課題を抱えています。さらに、家族の問題、本人の精神的な問題、学級内の人間関係、教師との関係、学習面など、子供の抱える問題は多岐にわたります。カウンセリング理論・心理療法の諸派によって問題解決の手法は異なります。しかし、問題解決のためには特定の理論や療法、カウンセリング技法に偏らず、使えるものは何でも使おうという折衷主義的立場が必要です(国分,1981)。
 問題解決のためには、主要な理論の優れたところを取捨選択し、状況に応じてどの技法を適用したらよいかを適宜判断し、再構成して活用することが望ましいです。まずは、カウンセリングの土台となる、ロジャーズ理論をみていきましょう。

2.来談者中心療法

(1) 来談者中心療法の概要
 来談者中心療法・クライエント中心療法は、カール・ロジャーズ(Carl Rogers,1942)によって生み出されました。来談者とクライエントは同じ意味で、ともに相談に来た人のことです。
 このカウンセリングの特徴としては、治療者である医者の権威性を否定し、医師以外の非専門家の人々へもクライエント中心の援助者としてのアイデンティティを提供したことや、科学的な実証研究を遂行してきたことなどが挙げられます。
 ロジャーズの著書『カウンセリングと心理療法』(1942)は議論を呼び、心理臨床における指示-非指示論争を生むこととなりました。 指示とは、カウンセラーがクライエントに対して、「ああしなさい」「こうしなさい」ということです。一方、非指示とは、カウンセラーはクライエントに指示を出さずに、気づきや成長を促していくことです。
 ロジャーズは、「クライエントが自ら責任をとることや自由な表現の尊重、埸面構成によって、自らがこの場の主体であり、自己決定の方向が示唆される。これらはカウンセラーの受容や明確化によって進行し、洞察に導かれる。それとともに新しい行動が積極的に起こり、洞察と行動が深く広く統合されるにつれて、独立した人格としてのクライエントが明確にあらわれはじめ、終結を自ら決定する。」と述べています(友田,1996)。
(2) 来談者中心療法の3条件
 ロジャーズは、カウンセリングを受容(条件の肯定的配慮)、共感(共感的理解)、自己一致(純粋性)と定義しました。ロジャーズが提唱したカウンセラーに求められる3つの態度を説明します。
 ➀ 受容(条件の肯定的配慮)
 「受容」とは、クライエントが訴えている内容、感情、行動をカウンセラーの価値観などを交えず、無条件に受け入れることです。まずは、相手をあるがままに受け入れ、積極的に聴く姿勢を見せることでクライエントへの尊重を表します。ありのままの自分を受け入れられたと実感できたクライエントは、自由に自分を表現できるようになるといわれています。
 教師の立場で言えば、教師は好き嫌いで子供を選ばず、すべての子供を受け入れなくてはなりません。教師は子供を一人の人間として受容することが必要だといえます。
 ➁ 共感(共感的理解)
 「共感」とは、「相手の立場に立って物事を見る」ということです。相手の気持ち・感情に付き合い、クライエントの訴えや感情を自分のことのように理解し、それを正確に伝えることができたとき、クライエントは自分の内面をもっと自由に経験できるようになることができます。
 教師の立場で言えば、教師は子供の話に共感することが必要です。共感と同情は違います。相手が「つらい」「かなしい」と言ったとき、そのつらさとかなしさは、どのレベルなのかを考えます。常に子供の気持ち・感情を理解しようとします。
 ➂ 自己一致(純粋性)
 「自己一致」とは、カウンセラーが感じていることと、クライエントに対する言葉や態度が一致しているかどうかということです。カウンセラーがありのままの純粋な存在であろうとすれば、クライエントもありのまま自分となって心を開きます。
 教師の立場で言えば、教師は、自分の心・発言・態度を、自己一致させることが必要です。態度では好意的なのに、心の中では相手をバカにしたり、嫌ったりするのは自己不一致といえます。話を聞いている時間は、全身全霊で聴くことです。
(3) 来談者中心療法ができるまで
 ロジャーズは児童虐待防止協会(日本の児童相談所)で、登校拒否、自閉症、非行少年や恵まれない環境の子供達のカウンセリングをしていました。しかし、少年達はカウンセリングが終了しても再び問題行動を繰り返すので、今までのカウンセリング方法に限界を感じていました。今までのカウンセリングは、カウンセラーが中心で「ああせよ」「こうせよ」と指示する傾向が強かったのです。
 ロジャーズは、ある多動児の母親のカウンセリングをして、当初、「ああしなさい」「こうしなさい」と指示をしていました。しかし、まったくカンセリングの効果がなかったので、ロジャーズと母親はカウンセリングをやめることにしました。その母親は、ロジャーズにお礼を言いドアを出ようとした時、「ここでは、大人のカウンセリングはしないのですか。実は、子供のことより、私のことが話したいのです。」と言いました。
 母親は、自分の幼い子からの生育歴から、現在の夫婦関係、自分の悩みを話し、それが子供に影響していると考えていると、ロジャーズに伝えました。母親自身の問題を解決するうちに、子供の多動は解決していきました。ロジャーズは、クライエント自身が自分の問題の原因を知っていると考えました。そうしてロジャーズはクライエントの力を信じてカウンセリングをする来談者中心療法(クライエント中心療法)の必要性を説きました(保坂・末武・諸富,2005)。
(4) ロジャーズの結論
 カウンセラーの考えの押しつけや強圧的な態度では一時的な効果しか望めないと経験したロジャーズは、カウンセラーとクライエントの関係性に着目するようになりました。クライエントは、問題の本質を知っている。そこで、カウンセラーは、クライエントの力を信じ、援助する「来談者中心療法(クライエント中心療法)」を生み出しました。
 来談者中心療法では、クライエント・人間尊重の理念やカウンセラーの条件・信頼関係の構築に不可欠な人間的態度を示しています。人間の潜在的な可能性である自然回復力や自己実現力を信じ、クライエントに寄り添うことがロジャーズの理論といえます(久能・末武・保坂・諸富,2006)。
 次に、学校では特に有効だと思われる、選択理論、ブリーフセラピー、認知行動療法について説明していきます。

3.選択理論

(1) 選択理論の概要
 W.グラッサーの選択理論(2003)では、人生は選択の束であるといいます。人間の行動は自分が選択したものです。例えば、非行生徒は様々な選択肢がある中で、自ら選択して非行を繰り返しています。「~によって不幸にさせられた」のではなく「自分で不幸な道を選択した」のです。「不登校生徒」「非行生徒」「ニート」も様々な選択肢がある中で、自ら選択して「不登校」「ニート」になっている。リストカット、摂食障害も同じです。しかし、自分の選択した行動では、社会に適応できません。そのためにストレス反応・身体反応を引き起こします。よって、教師やカウンセラーは、社会的に承認できる再選択を援助する必要があるのです。
(2) 選択理論と従来のカウンセリングとの違い
 従来のカウンセリングでは、クライエントの抱えている問題は、過去の生育歴・体験にあると考えます。対して選択理論では、過去の生育歴や体験は重要視しません。「今、どう生きるべきか」に焦点をあて、自分の行動を評価し、よりよい行動を選択していきます。過去がどうであれ、親がどうであれ、あなた自身は今よりもっと良くなれます。そのため、過去の生育歴や親のために問題行動をしているという言い訳は認めない厳しい理論です。
(3) 自己の「選択」の気づきから「再選択」へ
 選択理論では、過去、他人、環境、親、性格、年齢などのせいにする「言い訳」、そうしなければならない「こだわり」から離れ、どうして問題のある「選択」をしていたかに気づかせます。そして、過去がどうであろうとも、本来の自己イメージの「理想」や「願望」を鮮明にして、解決のゴールを設定し、効果的な行動を「再選択」していきます。教師やカウンセラーは、生徒の「再選択」できるように情報を与え、アプローチしていきます。

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